研究概要 |
ネコ前臼歯へのマスタードオイルあるいは電気刺激による犬歯の歯髄血流と歯髄内神経活動を記録し,歯髄刺激が他歯へ及ぼす影響を検索した. 第二前臼歯電気刺激群(100μs,5ms,20ms)で犬歯歯髄血流は,それぞれ107.9±7.8%,134.9±26.7%,および125.1±17.1%(各n=5)と増加した.マスタードオイル10分貼付群でも血流は144.2±38.7%(n=7)と増加したが,最大値に達するまでの時間が長く,刺激終了後も血流増加が長時間持続する傾向が認められた.なお,第二前臼歯電気刺激終了後に,0/5(100μs),1/5(5ms),および2/5(20ms)の実験例で犬歯歯髄内神経の自発発射が記録された.マスタードオイル10分貼付例では自発発射は認められなかったが,2時間貼付例では,貼付中に3/5例で自発発射が認められた.これらの変化は眼窩下神経を切断しても同様であった.以上の結果から次のような新知見が得られた. ・第二前臼歯刺激による犬歯の歯髄血流増加に,犬歯と前臼歯を同時に支配する分岐歯髄神経の関与(軸索反射)が示唆された. ・第二前臼歯刺激後に観察された犬歯歯髄内神経の自発神経発射は,第二前臼歯歯髄内に存在する主にA線維(分岐線維)の軸索反射,あるいは犬歯歯髄に生じた変化によって刺激された犬歯歯髄内A線維などの興奮を示すと考えられた. ・歯髄刺激により当該歯以外の歯で神経発射や血流変化が生じることから,分岐線維は歯痛の定位や複数歯の刺激感受性の変化へ関与する可能性が示唆された. 今後は第二前臼歯以外の隣在歯への刺激も試み,犬歯への影響にどのような差が存在するかを検索していく予定である.
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