数種の歯科用セラミックスにたいしてBridge Indentation法により予亀裂導入を試みたところ、予亀裂導入時に破断してしまうケースが頻発した。審美性を考慮する必要のある歯科用セラミックスは工業用のセラミックスに比べ一般的に破壊靭性が低い。工業用セラミックスの分野では実績のあるBridge Indentation法であるが、これをそのまま歯科用セラミックスに適用するのは困難であると判断し、本手法の問題点を検討した。試行を重ねた結果、問題は予亀裂発生のmonitoringにあることが判明した。すなわち予亀裂の発生を当初はポップイン荷重で確認することにしていたが、歯科用セラミックスでは明確なポップイン荷重の検出が困難で、確認できない間に圧縮破壊に至るのである。さらに検討した結果、解決のためには顕微測定法かAE法、もしくはこれに準じる方法で行う必要があるとの結論に達し、現在予亀裂の発生時に発生する微弱な音波をmonitoringすることで一部のセラミックスの予亀裂導入に成功したところである。このように研究実施計画に記載していた予亀裂導入法が予定通り確立できず本来のスケジュールからは遅れが出ているため、疲労試験機では予備試験としてコンポジットレジンを用いた動的な本疲労亀裂進展試験法を先行させ、破面の電顕観察も実施した。その結果、コンポジットレジンは水中では亀裂進展抵抗が大きく向上すること、その理由として吸水によるplasticzationによって亀裂先端の塑性域が拡大し亀裂進展に要するエネルギーが増大することが大きい理由として考えられることなど、セラミックの水中での静的及び動的疲労の解析にも有用と思われるいくつの情報を得ることができた。
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