研究概要 |
前年度の課題であったK値制御中に発生する不安定破壊は,亀裂付近の変形量がごく小さい歯科用セラミックスの亀裂の進展を,市販のクラックゲージではなく,0.01mmまで測定可能な顕微鏡にてよみとり,データをK値制御プログラムに投入することで解決した。同方法にて大気中および水中の環境下,また応力比を変化させた条件で疲労亀裂進展試験を実施した結果,水中環境下では疲労亀裂進展の加速が認められること,また,大気中では動荷重による疲労が支配的になるのに対し,水中環境では静荷重疲労の影響がより強く出ることなどが示された。さらに臨床レプリカのSEM観察で,1)合着後に生じる。Catastrophicな破折には前兆となるmicroscopicな亀裂の進展が認められる,2)セラミックのような脆性の高い修復材では辺縁のflowやmicro crackが予後を悪化させる,3)たとえ部分的な破折が生じても接着していれば直ちに予後不良とはならないことなどが確認できた。以上のことから,口腔内のセラミック修復物は水分の存在によって静的疲労と動的疲労を併せて受けるため,応力負荷部以外でも疲労亀裂の進展が生じること,catastrophicな破折を防止するには初期欠陥やmicro crackを検知し,これを部分的に修復することが効果的であることなどが示唆された.
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