研究概要 |
ヘルパーT細胞には,様々な外来の異物に対して反応できるように多種のクローンが存在する。 そのため,全T細胞から見ればごく一部のT細胞のみが特定の抗原蛋白に対して反応するという事実が生ずるので,抗原特異的なヘルパーT細胞の応答性を評価することが困難であった。 そこで我々は,歯周病細菌のうちPorphyromonas gingivalis(P.gingivalis)の分子量53kDaの外膜蛋白(Ag53)を特異的に認識するヘルパーT細胞株を患者および健常者の末梢血単核球から樹立し,ある程度均一化したヘルパーT細胞集団を実験系に用いた。これらT細胞株を用いて,(1)Ag53蛋白上のT細胞認識部位,(2)HLA拘束性,(3)リンフォカイン産生性について,各T細胞株間での応答性の違いを比較した。また,Ag53は歯周病患者に血清IgG抗体産生を誘導する蛋白であることから,我々はこの蛋白に対する,歯周病患者のIgG抗体産生様態(抗体認識部位およびIgG抗体サブクラス)の個体差について調べてきた。 Ag53に対するIgG抗体産生は,ヘルパーT細胞が産生するリンフォカインによって制御されていることが予想される。 このことを明らかにすることは,T細胞応答性を調整することが,IgG抗体産生にどのように影響するかを評価することにつながり,P.gingivalis感染に対する歯周病の免疫療法の確立において不可欠である。
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