研究概要 |
本研究の目的は各種修復物に隣接したエナメル質の二次う蝕発生機序過程を解明することである。修復物としてアマルガム(AM),コンポジットレジン(CR)およびグラスアイオノマーセメント(GI)に隣接するエナメル質(0.6mm×3.6mm)に0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)で脱灰し経時的に表面微細構造を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。さらに,脱灰液中のエナメル質から溶出したカルシウム量を測定するとともに脱灰エナメル質の表面化学組成について定量分析した。次に,各種修復物に隣接した研磨エナメル質および5分脱灰後のエナメル質にう蝕原因菌の一つであるStreptococcus mutans MT 3940を付着させ,その分布と形状をAFMで観察し,以下の結果を得た。 1) AFM観察で2分脱灰後のCRに隣接したエナメル質に陥凹を認めたが,AMに隣接したエナメル質に変化はなかった。脱灰5分後以降,AM,CRともに隣接するエナメル質の形態的な変化を認めた。しかしながら,GIに隣接したエナメル質表面は20分脱灰後も変化はなかった。 2) AMやCRに隣接したエナメル質から溶解されたカルシウム量はGIより多かった。 3) AMやCRに接した脱灰エナメル質のCaO量とP_2O_5量はエナメル質中央部に比べ減少し,特にP_2O_5量の減少が著明であった。AMやCRに接した脱灰エナメル質のCa/P原子比はエナメル質中央部より増加したが,GIではどの分析領域もほとんど変化はなかった。 4) GIに隣接したエナメル質における細菌付着はAMやCRに比べ少なかった。また,研磨面と脱灰面での細菌付着量の違いはなかった。以上より,GIはAMやCRに比べその隣接するエナメル質表面の初期脱灰や細菌付着は少なく,二次う蝕の発生を抑制することが分かった。また,これらの観察にAFMが有用であった。
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