研究概要 |
本研究の目的は、歯周病のrisk factorをより正確に明らかにするために、神経・内分泌・免疫型のネットワークの歯周病への関与の一端を解明することである。 1.in vivoにおける神経ペプチドのスクリーニング 正常ラットから得た歯周組織を取り出し、免疫組織化学染色を施したところ、歯根膜中にCGRP,VIP,NPY,を含む神経細胞が存在していることを確認した。また、歯肉組織中の血管周囲の神経細胞にも発現を認めた。 2.in vivoにおける神経栄養因子のスクリーニング 正常ヒト歯肉から得た線維芽細胞、歯肉上皮細胞、歯根膜細胞をそれぞれ培養し、NGF,BDNF,NT-3およびその受容体であるTRKA,TRKB,TRKCの発現をPCR法により検討した。 (1)神経栄養因子および受容体のmRNAの発現 NGFはすべての細胞において発現を認めた。TRKAは全ての細胞において発現を認めた。BDNFは上皮を除く全ての細胞において発現を認めた。TRKBはHPDLを除くすべての細胞に発現を認めた。NT-3はHGKを除く全ての細胞において発現を認めた。TRKCはHPC-2を除くすべての細胞において発現は少なかった。 (2)IL-1βの影響 NGFでは特に影響は認められなかった。TRKAではHPCにおいてはIL-1βによって、発現の減少傾向を認めた。BDNFではHPCにおいてはIL-1βによって、発現の増加傾向を認めた。TRKBではHGFおよびHPCにおいて、発現の増加傾向を認めた。NT-3ではHPDLにおいて、発現の減少傾向を認めた。TRKCではHPDLにおいて、発現の増加傾向を認めた。 3.in vivoにおける神経栄養因子のスクリーニング BDNFを除いては歯肉上皮に発現を認めた。歯肉結合組織においても発現を認めたが、非特異的反応も見られ、今後検討を要する。 歯周組織において神経ペプチド、神経栄養因子およびその受容体の発現を認めたことから、歯周組織再生あるいは破壊に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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