研究概要 |
近年,日本における超高齢化社会の到来が危惧され,歯科医療においてもその対応が急務とされている.高齢者への適用が多い大型義歯,特に全部床義歯はその支持・安定を被圧変位性の高い欠損部顎堤粘膜に依存しており、さらにその維持を口唇・頬・舌などの周囲軟組織との機能的協調に求めている。したがって機能時の動揺が少ないことが,義歯の主要な評価要素の一つとなるが、それに影響を与える因子は多様であり、それら因子の関連性については定量的な検索が進んでいるとは言い難い.本研究では咬合が高度に崩壊した高齢歯科患者に適用される大型義歯の定量的で効率のよい製作指標を得ることを目指し、1)6自由度で口腔内の義歯動揺が計測・解析可能なシステムを開発し、2)義歯の動揺に関する数値シミュレーションモデルを構築し、3)口腔内実験,模型実験,数値シミュレーションの3者の連携により,義歯の動揺に関わる因子の解析手法,及び最適形状の推定手法を確立することを目的とする.平成9年度は以下のことを行った。 1.TM Jaw Graphの調整 本実験の中核となるTM Jaw Graphは99個までのターゲットの三次元座標を50から100Hzのサンプリングレートで時系列計測可能なものである。カメラ前面にあるストロボから投射し、マーカーにより反射された赤外線をCCD上で検出するので、ノイズの影響、画像認識の問題がなく、無拘束状態での剛体運動の時系列計測が可能であり、義歯の動揺への影響はほとんどない。TM Jaw Graphの赤外線カメラ2台を3-D Auto Tracking System(現有)の撮影ゲージ内に設置し、カメラキャリブレーションを行った。 2.義歯動揺計測システムの開発と精度検証 上顎、上下顎義歯の12個の標点の動きから義歯動揺を計測するプログラムを整備した。またコンピュータ制御のXYZパルスステージにて精度検証を行った。 平成10年度は模型・実験義歯による口腔外実験モデルの製作、各種動揺計測実験、および口腔内での義歯動揺計測実験を行う予定である。
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