研究概要 |
高齢者における咬合回復による身体活動への影響を調べるため、歩行運動に着目し、下顎位の変化が歩行リズムに与える影響を検討するために、歩行リズム測定器を試作した。この装置を用い、健常成人を対象に下顎安静位およびシリコーン製チェックバイトによって保持された側方偏心位における歩行リズムを測定した。左右それぞれの踵部が接地している踵接地時間、踵部が床面から離れ、再び接地するまでの踵離地時間、踵部が接地してから次に接地までの歩行周期について分析し、このシステムの有用性について検討した。その結果、側方偏心位と下顎安静位での歩行リズムの変化は、両側での踵接地時間、下顎偏心側の反対側での踵離地時間、及び両側での歩行周期において有意な差が認められた。これにより、下顎位の変化が動的な環境での身体機能の一つである歩行リズムにも影響を及ぼすことが示唆され、この歩行リズム測定装置の有用性が認められた。 一方、中枢機能への影響を調べるために、近赤外線酸素モニター(島津製作所社製生体酸素モニターOM-100A)を用い、被験者を顎口腔領域に異常を認めない26〜32歳の男性健常有歯顎者で、酸化ヘモグロビン,還元ヘモグロビンおよび総ヘモグロビン量の変化量の測定を行った。実験は、被験者の大脳前頭葉部に相当する前頭部頭皮にセンサーを貼付し、測定開始1分後ガム咀嚼を5分間行い,ガム咀嚼終了後3分間計測したところ、全ての例においてガム咀嚼開始後酸化ヘモグロビンの増加,還元ヘモグロビンの減少が認められた.この結果ら,近赤外線酸素モニターによる咀嚼運動時のヘモグロビン量の変化の検出が可能であることが示唆された。
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