形態的な運動中心と考えられるゴシックアーチのアペックスと機能的な運動中心と考えられるタッピングッポイントとの位置関係は、これまで現在の咬合位を付与する際の基準として多くの研究者によって追求されてきた。本研究では両者の位置関係およびタッピングポイントなばらつきを切歯点部でだけでなく、顆頭点でも観察することによって両下顎位を広義にとらえようとするものである。その際、咬合位が不安定となりやすい顎機能異常者を被験者として選んだ。 平成9年度の研究計画として、正常者および顎関節のX線検査、顎関節のMR画像検査、下顎運動検査を行った。下顎運動検査では、下顎の限界運動を記録するとともに、種々のタッピング運動を記録し、咬合位、最後方咬合位とタッピングポイントとの関連を追求した。ただし、下顎運動の記録に6自由度の顎運動測定器ナソヘキサグラフを用いた。その結果、切歯点については上下顎歯列の形態的な 安定とは別に、比較的安定した経路を描くタッピング運動の存在が確認された。しかし、顆頭点の運動については精度的な問題から分析に困難をきたした。 購入した3次元6自由度運動解析システムは、限界運動の記録に適しているが、咀嚼運動はもとよりリズミカルなタッピング運動の記録にも制約のあることがわかった。またゴシックアーチ描記装置にも工夫が必要であった。現在、研究記録より遅れているが、システムとして完成しつつある段階である。
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