研究概要 |
本研究は臨床的な咬合の正常像および顎関節症患者の終診時の咬合像の基準としての習慣性開閉運動(タッピング運動)の可能性を追究するものである。本年度の研究計画として、個性正常咬合を有する健常者および顎関節症患者(非復位性関節円板転位症例)各10名について、臨床症状の診査、口腔内および顎関節のX線検査、顎関節部のMR画像検査および下顎運動検査を行うことを計画したが、その目的はおよそ達成することができた。その成果の一部は(1)第100回日本補綴歯科学会記念大会(平成10年11月28日、荒木次朗ほか)、(2)第2回日本補綴歯科学会西関東支部学術大会(平成11年2月13日、平井真也ほか)として発表した。その要旨は、習慣性閉口運動を咬頭嵌合位から2mm下方で水平断するとき、健常者では咬頭嵌合位の水平的位置を原点としたとき(-0.70,-0.10)を中心とした半径0.54mの円の中に97%が含まれるのに対し、顎関節症患者では(-0.57,-0.13)を中心とした半径1.68mmの円の中に97%が含まれるというものである。すなわち、顎関節症患者における閉口路が健常者のそれと比べ大きくばらつくことが明らかとなり、この運動を上記の基準として利用できる可能性が開けた。これまで対象を関節円板転位症例に限ってきたが、今後は咀嚼筋障害患者にも広げていく予定である。また、これら顎関節症患者の運動のばらつきに影響する因子についても追究する予定である。 一方、上記の下顎運動測定装置の座標系が上顎咬合平面を基準に組まれていることから、顎関節や歯列に形態的な異常の認められる顎関節症患者の運動の測定に問題のあることが明らかとなり、この装置が本来もっている機械的な座標系を基準にして習慣性開閉運動や下顎頭の運動を表現し、さらに同じ座標系をMR画像にも適用するためのシステムを現在構築中である。
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