研究概要 |
IL-6は,IL-1によりその合成が強力に誘導され,急性期蛋白の発現破骨細胞の増殖と分化の促進による骨吸収の誘導などを行うため、変形性関節症(OA)や,滑膜炎などの病態との関連性が示唆されている.そこで,顎関節OA患者における関節洗浄回収液中のIL-6濃度を測定し,臨床像などと比較検討した. 作業仮説:関節病態により関節洗浄回収液中のIL-6の同定率および濃度に差がある. 方法:対象は全て復位を伴わない関節円板転位をきたしたOA患者13名(16〜57歳,平均36歳)で,上関節腔の洗浄療法施行時に経時的に洗浄回収液を10mlづつ,20本の試験管に採取した.採取液の処理は,まず遠心分離し,回収された上清を遠心式凍結乾燥濃縮システムを用いて約5倍に濃縮し,分析検体として測定まで-85℃で保存した.IL-6の測定には,(株)富士レビオ製ヒトIL-6ELISAキットを用いた. 結果:全263検体中IL-6は115検体(約43.7%)で同定された.また,75%以上の同定率を示した症例が4例,全く同定されなかった症例が2例と,症例による同定率のばらつきが大きいこと,さらに経時的な推移では同定率が徐々に低下する傾向が示唆されることが判明した. 考察:演者らの既報より,同一検体におけるIL-1βの同定率がほぼ100%であることと比較すると,IL-6の同定率の差は何らかの病態を反映しているものと推測できる. 結論:顎関節OA患者における関節洗浄回収液中のIL-6は病態との関連性を示唆する.
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