研究概要 |
癌細胞の心腔内注射によるヌードマウス骨転移実験モデルを用いた数種の口腔扁平上皮癌細胞株の骨転移形成の検討から,HSC-2,HSC-3においてのみ骨転移を示し,HSC-2では骨と筋・筋膜の2つの臓器に選択的に転移を示すことを確認した. 口腔癌細胞を用い,骨への転移臓器特異性を制御するSeed側(癌細胞)の機構を分子レベルで明らかにすることを目的に,HSC-2,3に骨転移形成能を有すことを指標に数種の細胞株について既知の転移関連因子について検討した.その結果,それらの発現パターンにばらつきが多く,骨転移株に特異的因子は認められず,転移が癌細胞の遊離,浸潤,遠隔臓器での接着,増殖という複雑なプロセスを経て成立するため,骨転移においても一義的要因だけで臓器を決定出来ない可能性が示唆された.最も,骨転移形成との相関が示唆されたのが転移抑制遺伝子nm23で,H1アイソフォームの発現がHSC-2,3ならびに骨転移能を有するヒト乳癌細胞MDA-231で著明に減少した.現在,その発現遺伝子を細胞に導入し検討中である.以前に報告した骨転移と相関するPTHrP,MMP産生,E-cadherinの発現は関連する傾向を認めたが臓器を特定する因子か否か不明で,転移成立後の骨破壊との関連が考えられた.骨転移制御遺伝子をDifferential displayを用いてクローニングするため,モデル系としてHSC-2の高骨転移株と高筋肉転移株の樹立を試みている.ヌードマウスの左心室内に癌細胞を注入し骨転移および筋肉転移を誘発させ,それぞれの転移巣より腫瘍組織を採取し,そこから得られた両細胞を再度左心室に播種し,同様の方法を繰り返すin vivo→in vivoの選別法を行っているが4passageを行った時点で完全に高骨転移と高筋肉転移能を備えた細胞株は得られておらず選択を継続中である.
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