研究概要 |
歯性感染症患者の閉塞膿瘍から、細菌を分離したところほとんどの症例がOral streptococciと他の嫌気性菌との混合感染であった。中でもS.milleri group(S.constellatus,S.ang inousus,S.intermedius)が高頻度に検出され、歯性感染症での起炎菌としての同菌種の重要性が再認識された。今回検出したOral sterptococciの歯性感染症で繁用されているABPCにたいするMIC値は0.39μg/mlで近年報告されている耐性化は認められなかった。しかしながらされら臨床分離S.milleri groupの約半数にMBC/MICが32倍以上のトレラント株が認められた。常在菌叢に耐性株の検出を目的に健康成人唾液中のABPC耐性(MIC>1μg/ml)streptococciの分離を行ったところ、被験者74名中56名(75.5%)の唾液中よりABPC耐性streptococciが検出され、常在菌叢に耐性株が潜在的に存在している可能性が示唆された。耐性株はS.sanguis,S.oralisが多かった。また上記の検出菌のうちS.constellatusと同時に検出されることの多い嫌気性菌の1つであるF.nucleatumを用いて、BALB/cAマウス皮下膿瘍形成能について単独接種および混合接種での比較検討を行った。S.constellatus、F.nucleatumとも単独接種によりマウス皮下に膿瘍を形成した。両菌の混合接種時膿瘍表面積はS.constellatusの単独接種群に比較して増大し、またF.nucleatum単独接種よりもやや大きくなる傾向を示した。膿瘍かたの菌の回収は、S.contellatusではいずれの株においても混合接種時に単独接種時よりも増加し、S.contellatusとF.nucleatumと協調作用が示唆された。膿瘍の病理組織所見では単独接種及び混合接種時に差異は認めなかった。
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