研究概要 |
Oral streptococciの病原性に関する昨年までの検討では、S.constellatusの病原性は嫌気性菌Fusobacterium nucleatumの培養上清(代謝産物)との混合によって増大すること、またこの培養上清は好中球の機能を抑制することが示唆された。そこでF.nucleatumの培養上清がサイトカインの産生にどのような影響を与えているのか検討する目的でS.constellatusとF.nucleatumあるいはF.nucleatum培養上清の混合接種時のマウス血中サイトカイン(MIP-2,TNF-α,IL-1 β,IFN-γ)濃度を経時的に測定するとともに、ヒト末梢多形核白血球(PMNs)とmonocyteにS.constellatusとF.nucleatumあるいはF.nucleatum培養上清をin vitroで混合、インキュベートし、産生されたサイトカイン量の測定を行った。in vivoの検討では、F.nucleatumの培養上清を加熱後接種した場合、接種後1-2時間後の血中サイトカイン濃度が非加熱上清混合群の約50%に減弱した。in vitroのPMNsとの検討においてF.nucleatum培養上清は加熱の有無に関わらず、TNF-αの産生を誘導しないのみならず、S.constellatusのTNF-α産生誘導を抑制する可能性が示唆された。また、monocyteではF.nucleatum培養上清とS.constellatusの同時添加ではTNF-α産生は抑制された。薬剤耐性に関する昨年までの検討では健常成人唾液中のβ-lactam薬耐性株をABPCを用いてスクリーニングし、耐性ポピュレーションが菌数は少ないものの健常人に普遍的に存在することを確認した。 今回、スクリーニング薬剤にCCLを用いABPCとの比較を行ったところ、CCL耐性株は菌数、保菌率ともにABPC耐性株よりも高い傾向を示した。また、CCL耐性のポピュレーションがABPC耐性とはある程度独立して存在すること、ABPCとCCLでは作用点となるPBPが異なる可能性が高いことが示唆された。
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