本年度はwistar系ラットのオトガイ舌骨筋を支配する運動神経細胞の局在とその末梢神経経路をHRP神経標識法と電気生理学的手法によって明らかにした。なおラットのオトガイ舌骨筋は舌下神経と頚神経ワナによって2重支配され、両神経は一ヵ所のみで吻合(以下、吻合部と略す。)することは平成9年度に明かにした。 1) 運動神経細胞の局在(HRP神経標識法) 舌下神経を遠心路にする樹状突起の発達した、比較的大きな細胞が舌下神経核腹外側部に位置し、これらは嚥下反射に関与していると考えられた。また、obexのやや尾側で中心管に近接して位置する小さな細胞が存在し、それらは頚神経ワナを遠心路としていた。 2) in vitroでの電気生理学的検討 甲状舌骨筋への分岐部より末梢側の頚神経ワナを舌下神経本幹との吻合部、舌下神経の内・外側技の分岐部およびオトガイ舌骨筋枝とともに一塊として摘出し、人工脳脊髄液を満たしたrecording chamberに移し、オトガイ舌骨筋枝からsuctionelectrodによって神経放電の導出を試みた。その結果、同神経から活動電位が導出され、それらの活動電位は、頸神経ワナへの電気刺激によって放電数が増減した。これらの事象は、頸神経ワナ経由のオトガイ舌骨筋の運動神経細胞はその末梢経路内でシナプス結合していることを示すものである。
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