研究概要 |
歯周疾患に関しては疾患の発生,進行様相すら未だ不明な部分が多い。そこで,この研究の目的は歯周疾患モデルの構築を試み,さらに,それぞれの危険度を算出しながらリスクファクターを特定しようというものである。 計画では,サンプルの設定を新潟市に求め,住民基本台帳より無作為抽出を行う予定であったら,調整に手間がかかり,1998年4月にずれ込んだため,本年度は,メインを必要な予備調査にあて,新潟県板倉町において成人558名について歯周疾患有病に関わる各種パラメーター測定,ならびに血液データ採取を含む全身的な健康調査-血圧,心臓,糖代謝,脂質代謝,肝・腎機能,貧血,肥満-を行った。その結果,糖代謝(血糖,Hba1c),尿糖などの検査値の正常群と異常群で歯周健康状態に有意差は認められなかったが,肝機能(α-GTP)で正常値を超えた(>60)群はPD+4mmを持つ者の割合が81.3%,PD6+mmを持つ者の割合が31.3%であり,正常群のそれぞれ56.6%,10.5%に対し有意(p<0.05)に高値を示した。平均喪失セクスタンツ数も2.3対1.8と多い傾向にあった。また,心臓所見に何らかの異常がある者はPD6+mmを持つ者の割合が14.7%で,成城社9.4%に対し高率傾向にあった。これらの結果は,歯周状態と全身健康状態との関連について直接的な因果関係を示すものかどうかは定かでない。一方,糖尿病あるいは糖尿傾向のある者は歯周疾患の悪化傾向にあるという報告が多数認められるが,ケースコントロールスタディーではなく,本調査のように,一般集団の中での解析ではその傾向がつかみにくい可能性を示唆している。これらの点を踏まえ,次年度以降のサンプリングと調査デザインを考える必要がある。
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