研究概要 |
歯周疾患に関しては疾患の発生,進行様相すら未だ不明な部分が多い。そこで,この研究の目的は歯周疾患モデルの構築を試み,さらに,それぞれの危険度を算出しながらリスクファクターを特定しようというものである。 本年度はコホート調査のためのベースラインデータを得ることを目的に研究を遂行した。新潟市の住民基本台帳より70歳全数(4,542名)を選別し,郵便による調査主旨説明と参加同意書を得た3,689名(回収率81%)を対象とした。この中から,母集団と著しく異ならないように性比率を考慮しサンプリングを行った600名,さらに,その中から有歯顎者554名を本研究の調査集団とした。基本的な歯周情報として,平均出血部位数,歯石沈着部位数,平均ポケット深さ,平均アタッチメントロスはそれぞれ男6%,12%,3.4mm,2.lmm,女8%,7%,2.7mm,1.9mmであった。この内,有意な性差を示した項目は歯石,ポケット深さおよびアタッチメントロスであり,男の方が状態は良くなかった。残存歯数の多寡で3群に分け平均アタッチメントロスを比較すると,歯数が多い群ほど有意(p<0.001)に低い値を示した。この結果は,結果として多数歯を保有している歯周疾患に対する抵抗性が高い集団と残存歯数が少ない歯周疾患リスク群が認められることを示唆するものと思われる。現在,歯周疾患のマーカーの決定と歯周疾患指数と生活習慣項目,全身健康指標(血液生化学検査値,運動機能など)との関連について理論回帰モデルを作り分析を行っている。 次年度は追跡調査結果を基に,歯周コンディションの変化を検出し,その要因となった事項(変数)を解析する予定である。
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