研究概要 |
本研究の目的は歯周疾患モデルの構築を試み,さらに,それぞれの危険度を算出しながらリスクファクターを特定することである。新潟市在住の70歳の有歯顎者554名のうち,2年間追跡調査を行えた394名を分析対象とした。ベースラインでは生活環境調査(老研式活動指標,喫煙ならびに飲酒習慣,口腔衛生習慣,歯科受療行動等),全身健康診査(血圧測定のほか血液生化学検査:肝機能,腎機能,免疫機能,脂質,栄養),歯周診査(アタッチメントロス(LA))を実施していた。2年後にLAが新たに3mm以上進行した場合を歯周疾患進行と定義し,これを1点以上有するか否かで対象者を2群に分類し,歯周疾患進行に影響を及ぼすリスクファクターについて分析した。75.1%(296名)に歯周疾患進行が1点以上認められ,そのうち168名は4点以上有していた。ベースライン時の種々の変数がその後の歯周疾患進行に及ぼす影響をChi-square testにより分析した結果,性別では女性に比べ男性に,生活習慣では禁煙者より喫煙者に,また口腔内状態ではアタッチメントレベル(AL)6mm以上を持つ者に歯周疾患進行が多く認められた(P<0.05)。一方,ベースライン時の血液生化学検査と歯周疾患進行との関係をt-testにより評価したが,有意な結果は得られなかった。さらに,歯周疾患進行の有無を目的変数にし,ロジスティック回帰分析を行った結果,喫煙,AL6mm以上に,それぞれオッズ比3.74および2.29で有意な関係が得られた。喫煙者は禁煙者より3.74倍ならびに口腔内のALが6mm以上を持つ者は6mm未満を持つ者より2.29倍の危険度で,歯周疾患が進行しやすいことが見出された。以上のことから,70歳以上の健常高齢者における歯周疾患進行のリスクファクターには,喫煙とAL6mm以上が有意に関連していることが示された。
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