研究概要 |
本研究の目的は歯周疾患モデルの構築を試み,さらに,それぞれの危険度を算出しながらリストファクターを特定することである。 70歳の有歯顎者599名,80歳162名の歯周ポケットの深さ(PD)とアタッチメントレベル(AL)についてCross sectional studyでの多重Logistic回帰分析の結果,重度歯周病と有意に関連した変数は年齢,性,現在歯数,充填歯,ブリッジ支台であった。2年間のLongitudinal studyでは歯周病進行経験歯の要因として有意に関連した変数は現在歯数20歯以上,最大PD,AL,上顎大臼歯,下顎大臼歯,充填歯,鈎歯であった。 2年後にLAが新たに3mm以上進行した場合を歯周疾患進行と定義し,これを1点以上有するか否かで対象者を2群に分類し,歯周疾患進行に影響を及ぼすリストファクターについて分析した。ベースライン時の血液生化学検査と歯周疾患進行との関係をt-testにより評価したが、有意な結果は得られなかった。歯周疾患進行の有無を目的変数にし,ロジスティック回帰分析を行った結果,喫煙,AL6mm以上に,それぞれオッズ比3.74および2.29で有意な関係が得られた。喫煙者は禁煙者より3.74倍ならびに口腔内のALが6mm以上を持つ者は6mm未満を持つ者より2.29倍の危険度で,歯周疾患が進行しやすいことが見出された。以上のことから,70歳以上の健常高齢者における歯周疾患進行のリスクファクターには、喫煙とAL6mm以上が有意に関連していることが示された。 同対象者の内,血清IL-6, IL-10測定による免疫学的検査を276名に実施した結果,IL-6, IL-10濃度と重症歯周病の間には有意な関連は認められなかった。これは,自立する高齢者では歯周病に関する全身疾患は必ずしも生じないことを示唆する。
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