研究概要 |
分子内に酸化作用を有するt-ブチルペルオキシ基と3価のヨウ素原子とを同時に合わせ持つ特異な構造のアルキルペルオキシヨーダンは、有機合成化学におけるラジカル性酸化剤として有用であることが明らかとなった。具体的結果を以下に示す。 1)ペルオキシヨーダンはベンジルエーテル類のベンジル位メチレン基の酸化に有効であり、その反応機構も明らかにした。本反応を基盤とするベンジル基の酸化的脱保護反応を開発した。 2)アリル基も有機合成におけるアルコール類の重要な保護基であり、アルキルペルオキシヨーダンを用いた、アリルエーテル類のα,β-不飽和エステルへのアリル位酸化反応を開発した。分子内に水酸基、アセトキシ基、シリル基、ピラニル基等の保護基が存在しても、アリルエーテルのアリル位酸化反応が選択的に進行するため、官能基選択性の高い反応であることが判明した。 3)スルフィド、セレニド、ホスフィン等の酸化反応にも有効であり、それぞれ対応するスルホキシド、セレノキシド、ホスフィンオキシドが得られることを明らかにした。酸化的脱ジチオアセタール化反応の開発にも成功した。 4)アルキルペルオキシヨーダンはアミンの酸化にも有効であり、2級アミンとの反応では脱水素化が進行して、イミンが生成することも見出した。2級アミンの場合とは異なり、3級アミンとの反応では、アミンのα位炭素原子上にペルオキシ基が導入されたペルオキシアミノアセタールが生成する。 5)p-アルキル置換フェノール類との反応では、4-tert-ブチルペルオキシシクロヘキサジエノンが生成することを明らかにした。
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