研究概要 |
本研究は分子内Meerwein-Ponndorf-Verley(MPV)反応を基盤とし、SH基を有するキラルアルコール(不斉反応剤)とルイス酸によるα,β-不飽和カルボニル化合物の不斉還元反応であり、オレフィンへのSH基のMichael付加とカルボニル基の分子内MPV還元を連結した不斉反応の開発研究である。本反応生成物から飽和の2級アルコールを始め種々の官能基が導入された光学活性アルコールへの変換が可能であり、本年度は官能基交換型反応と不斉プロトン化による2連続不斉炭素の構築反応を検討した。 1) 官能基交換型不斉Tandem Michael-MPV反応の開発 【不斉反応剤の構造最適化】(+)-プレゴン、(+),(-)-カンファー、(-)-カウレン等から各種キラルメルカプトアルコールを合成し反応を試みた結果、カンファー誘導体が最適であった。 【不斉官能基交換型の反応】上記最適化された不斉反応剤とルイス酸を用いて各種α,β-不飽和カルボニル化合物との反応を試み、生成物の塩基処理によりγ-位にSH基をもつ2級アルコール(2個の不斉炭素構築)を高い不斉収率(〜96%ee)で得ることに成功した。また、本反応機構の確証を得た。 2) 不斉プロトン化反応の開発 【不斉Michael付加反応】各種α-置換α,β-不飽和カルボニル化合物と不斉反応剤との反応において得られるMichael付加物からα-位が不斉(〜97%ee)となるカルボニル化合物の合成に成功した。 【α一置換α,β-不飽和ケトンの不斉Tandem Michael-MPV反応】本反応生成物の還元的脱硫反応により得られる光学活性アルコールは2連続の不斉炭素を有し、高い不斉収率(>97%ee)で得られた。 上記反応の一般化および3連続不斉炭素の構築は次年度において検討する。
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