主要な薬物毒性因子「酸化的ストレス」と「活性代謝物」を中心に、肝ミクロゾーム、遊離肝細胞、初代培養肝細胞、肝臓組織を用いて薬物による肝毒性を解析した。 酸化的ストレスを解析するために、化学発光測定系を導入した。この測定系を利用してCL-HPLCシステムを確立し、薬物代謝過程で生成する過酸化脂質を直接的に検出することができた。この特異的な手法を用いることにより従来の指標(TBARS)で評価される脂質過酸化よりも早期の段階を評価することができた。さらに薬物代謝過程で上記試料から発生する極微弱化学発光を検出することができ、肝障害性評価との比較対応することにより薬物毒性との関連性を明確にすることができた。また極微弱化学発光を利用した臓器灌流測定システムを作製し、薬物灌流時に肝臓より発生する化学発光を直接検出することができ、臓器レベルでの酸化的ストレスを実証した。これらの測定系が検知した結果は細胞内グルタチオンの変動と密接に関連していることを明らかにした。 以上、薬物代謝に起因する酸化的ストレスに関する高感度で特異性の高い解析システムを確立することができた。 活性代謝物に関しては、ラットおよびヒト肝ミクロゾームおよび発現系を用いて抗高血圧薬ジヒドララジンの代謝によりCYP1A2だけでなくCYP3A4も標的タンパクとなることを明らかにし、アレルギー性肝炎のneoantigenとなる可能性を示唆した。また三環系および四環系抗うつ薬、イミプラミンおよびミアンセリンによる肝細胞障害性はシトクロム P450による代謝的活性化と密接に関連していることを示した。 NSAIDの肝障害を検討し、ジフェニルアミン骨格が細胞障害を惹起すること、さらにジフェニルアミンおよびその骨格を持ったNSAIDは酸化的リン酸化脱共役作用を有し、それが肝細胞障害の主因であることを明らかにした。
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