研究概要 |
1. ペプチドの合成 ヒト脳のNaチャンネルのIII-IVリンカー部のアミノ酸配列は DNFNQQKKKFGGQDIFMTEEQKKYNAMKKLGSKKPQKPIPRPANKFQGMVFDである。この中で3つの疎水性アミノ酸IFMが不活性化ゲートとして最も重要な部分であり、F(フェニルアラニン)をQ(グルタミン)に置換すると不活性化ゲートが閉じなくなる。本年度はFをQに置換した事による構造の違いを研究する為に、IFM部分を含む17残基からなるペプチドMP-3A(Ac-KKKFGGQDIFMTEEQKK-NH_2)およびMP-4A(Ac-KKKFGGQDIQMTEEQKK-NH_2)を固相合成法(Fmoc法)に基づいて合成し、逆相HPLC(ODSカラム)にて精製した。得られたペプチドを大気圧イオン化マススペクトルにより、分子量を確認した。 2. NMRスペクトルの測定 MP-3AおよびMP-4Aについて、各種二次元NMRスペクトル(COSY,TOCSY,NOESY)の測定をトリフルオロエタノール(TFE-d_2)溶媒、およびリン酸緩衝液(H_2O:D_2O=9:1;pH4.5)に200mMのSDS-d_<25>を加えて調製したミセル溶液それぞれにペプチドが3mMになるように溶かした溶液について行った。NOESYにより得られた距離情報に基づいて、50個の初期構造から、imsight II/Discover(NMRRefine)を用いたSimulated Annealing法による計算を行いエネルギーの低い方から10個の構造を重ね合わせて高次構造を決定した。その結果、TFE-d_2溶媒中においてはMP-3AおよびMP-4Aともにα-へリックス構造をとり大きな違いは見られ無かったがSDSミセル中においてはMP-3AのIFM部分はへリックス構造であったが、MP-4Aはシート状にのびた構造であり両者に違いが見られた。
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