研究概要 |
ウサギ消化管にどのような薬物代謝酵素が発現しているかを知るため、チトクロームP450に特異的な抗体を用いてウエスタンブロット解析を行い、CYP1A,CYP2C,CYP2DおよびCYP3Aの発現を確認した。されにrifampicinにより腸管のCYP3Aが誘導されることが明らかになった。 グレープフルーツジュース中のCYP3A阻害物質を同定するためジュース抽出物をHPLCで分離し構造決定したところ、阻害成分の本体はfurocoumarin2量体(GF-I-1とGF-I-4)であることが、決定された。さらにグレープフルーツジュース抽出物はCYP3A4だけでなく肝にのみ発現するCYP2C19などの活性を阻害することがわかった。これまでに報告されているグレープフルーツジュース相互作用はそのほとんどがCYP3Aの関与を示すものであり、なぜCYP3A4特異的に阻害が起こるのかを知るため、また阻害が消化管に限局されるのか否かを知るためomeprazole服用時のグレープフルーツジュースの影響を調べた。Omeprazoleは、肝のみに発現するCYP2C19により5位水酸化体へ、CYP3A4によりスルホン体へと酸化される。Omeprazoleとグレープフルーツジュースを併用した場合、5位水酸化体のAUCは変化せず、スルホン体のAUCが減少したことより腸管に発現するCYP3A4のみがグレープフルーツジュースによって影響をうけることが示され、グレープフルーツジュースの作用は、消化管に限局されることが明らかとなった。グレープフルーツジュースから単離したfurocoumarin誘導体を用いて阻害の機構について検討したところ、furocoumarin誘導体は競合だけでなく、酵素タンパクを不可逆的に失活させることによって阻害作用を示すことが明らかとなった。グレープフルーツジュースに含まれるfurocoumarin誘導体は非常に微量でありCYP3A4に高い親和性を持つことより消化管内でCYP3A4に捕捉されるために消化管特異的な阻害がおきる可能性が示唆された。
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