本研究は、RecQファミリーヘリカーゼを中心にして、高等真核細胞とともに出芽酵母を使って解析し、これらのヘリカーゼの関与するDNA複製、修復、組み換え、染色体構造形成の分子メカニズムを解析し、ブルーム症候群の高発癌性、ウエルナー症候群の老化促進機構の分子レベルでの解明をめざした。 1. マウスの相同遺伝子のクローニングと発現の解析 マウスのDNAヘリカーゼQ1(Q1)、ブルーム症候群原因遺伝子(BLM)及び、RecQタンパク質と相互作用する可能性が示唆されているDNAトポイソメラーゼIIIのcDNA(TOP3)をクローニングし、Q1及びTOP3の新しい遺伝子、Q1β及びTOP3βを発見した。これらのcDNAを用いてマウスの種々の臓器で、Q1、BLM、TOP3のmRNAの発現を調べたところ、精巣で特に高い発現が観察され、精子形成にともないDNAの組み換えが起こる時期に発現が上昇することがわかった。 2. two-hybrid系による相互作用するタンパク質の遺伝子のクローニング 酵母のtwo-hybrid系をもちいてQlと相互作用するタンパク質のcDNA、QIP1をクローニングした。このタンパク質は、タンパク質の核内輸送に関与するimportin αのホモローグで、このcDNAの単離は、タンパク質の核移行の研究に大きく貢献した。また、ウエルナー症候群の原因遺伝子産物(Wm)と相互作用するタンパク質(Wemer interacting protein 1)をコードする新規な遺伝子WIP1をクローニングした。 3. 出芽酵母をもちいた解析 RecQの酵母の相同遺伝子SGS1破壊の解析により、Sgs1の機能にはヘリカーゼ活性が必要な機能と必要としない機能があることが明らかになった。さらに、破壊株がブルーム症候群やウエルナー症候群の細胞のよいモデルになり、ブルーム症候群原因遺伝子産物やウエルナー症候群原因遺伝子産物の機能ドメインを推定することができた。
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