研究課題/領域番号 |
09470506
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
奥 直人 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10167322)
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研究分担者 |
塚田 秀夫 浜松ホトニクス(株), 中央研究所, 専任部員
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キーワード | がん転移 / ポジトロンCT (PET) / セレクチン / シアリルルイスA / 転移抑制 / インテグリン / マクロファージ / NR細胞 |
研究概要 |
本研究は転移性癌細胞の生体内動態を生きたままの動物で非侵襲的に検出する系を用い、癌転移初期過程の機構を明らかにすることを目的とする。本年度は昨年に引き続き臓器特異的転移が、癌転移初期過程の転移性癌細胞と標的臓器との特異的な相互作用に依存していることを明らかとした。さらに肝転移性リンパ腫において、その臓器特異的な初期集積を引き起こす因子として、転移性癌細胞上のシアル酸含有糖鎖が関与していることを明らかとし、このシアル酸含有糖鎖はシアリルルイスAである可能性を示した(Jpn.J.Cancer Res.1998)。またこの細胞におけるシアル酸含有糖鎖の関与として、GD1αが見いだされていることに着目し、GD1αのレプリカペプチドによる転移抑制を試み、見事に成功した(Cancer Res.1997)。次に視点を変え、癌転移初期におけるimmune surveillanceの重要性について検討を行った。実験転移モデルとしては、RAW117-H10細胞の門脈内投与による肝転移モデル、肺転移性癌細胞であるB16BL6細胞の尾静脈内投与による肺転移モデルを用いた。まず転移性癌細胞の投与数と転移能との関連および転移初期の細胞動態を検討し、実際の転移形成能に及ぼす生体防御系の関与を解析した。その結果、転移性癌細胞が標的臓器に転移巣を形成するためにはある程度の細胞数が必要であることが明らかとなり、転移形成に至らない細胞数の場合には標的臓器における極端な細胞集積性の消失が観察された。この原因として自然免疫機構、すなわち免疫系が賦活化されていない状態でも宿主の生体防御系が癌細胞に対して働くことが推察された。以上、本年度は十分な成果が上げられ、本研究は当初の予定どおり順調に進んでいる。
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