研究課題/領域番号 |
09470511
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 和夫 千葉大学, 薬学部, 教授 (90109918)
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研究分担者 |
小椋 康光 千葉大学, 薬学部, 助手 (40292677)
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キーワード | LECラット / テトラチオモリブデート / 銅 / メタロチオネイン / ICP-MS / ウィルソン病 / HPLC / スペシエーション |
研究概要 |
先天性銅代謝異常症であるウィルソン病の動物モデルであるLECラットを用い、肝臓中にメタロチオネイン(MT)に結合して蓄積している銅(Cu)を選択的に除去することを目的とした研究を継続して実施した。これまでテトラチオモリブデート(TTM)は、他のキレート剤と比べて優れた除去作用の特徴を有していることを示した。本年度の研究のターゲットは、TTMにより肝臓から除去された銅がどのような体内分布をとるか、またその機構はどのように説明できるかということに置いた。 TTMによって肝臓外へ排泄されるCuの化学形であるCu/TTM複合体が肝臓から排出されるときの機構に焦点を当てた。Cu/TTM複合体の肝臓からの排出経路として、血流および胆汁への排出が想定されるがそれらがどのように関与しているか明らかにした。TTMの用量による血流と胆汁への排出量を詳細に検討した結果、両経路への排出量比は用量に依存しないことから、両経路への排出に関る機構を想定する手がかりが得られた。 胆汁中へ排出されるCu/TTM複合体の化学形について検討した結果、そのままでは分離に用いたゲルろ過カラムから溶出されなかったが、その胆汁中にアルブミンを加えると、血流中と同じように、Cu/TTM/albumin=1:1:1の複合体として溶出された。従って、肝臓から血流と胆汁に排出されるCu/TTM複合体は同じ化学形をとっていることが推定された。 ウィルソン病患者にTTMを投与したとき、LECラットでは観察されなかった副作用が報告されたことから、TTMの投与による副作用発現の機構を検討した結果、TTMの加水分解により遊離してくるスルフイド(sulfide)が副作用の原因物質であることが明らかとなった。加水分解の抑制を目的として腸溶性カプセルに封入したTTMを投与したが、消化管傷害が観察されたため、この経路による投与法の検討を中止した。
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