先天性銅代謝異常症であるウィルソン病の動物モデルであるLECラットを用い、肝臓中にメタロチオネイン(MT)に結合して蓄積している銅(Cu)を選択的に除去することを目的とした研究を継続して実施した。昨年度に引き続き、TTMにより肝臓から除去された銅がどのような体内分布をとるか、またその機構はどのように説明できるかということ、さらにTTMを過剰に投与したときに肝臓内で生じるCu/TTM不溶性複合体の代謝的運命を明らかにすることに本年度の研究のターゲットを置いた。 TTMによって肝臓外へ排泄されるCuの化学形であるCu/TTM可溶性複合体が肝臓から排出された後、どのような挙動をとるかについて検討を行った。Cu/TTM可溶性複合体の主たる排泄経路は血流側ではなく、胆汁中であることを明らかにした。また除去されたCuの一部は腎臓及び膵臓に再分布したため、血流中に排泄されアルブミンとの間で形成された複合体の最終的な代謝過程を明らかにする手がかりを得た。 TTMを過剰に投与したときに肝臓内で形成されるCu/TTM不溶性複合体は、投与中止後に徐々に肝臓内で再可溶化し、可溶性のCu/TTM複合体と同様に胆汁中および血流中に排泄されることが明らかとなった。従ってTTM投与中止後にMTと結合して再蓄積するCuは、Cu/TTM不溶性複合体として肝臓内に残存したCuに由来せず、食餌中より供給されるCuに由来することが明らかとなった。これまでの検討と併せて考察するとTTMと生体内のCuはモル比に応じて3種類の複合体を形成するが、いずれの複合体も最終的にCu/TTM可溶性複合体となって肝臓外へ排泄されると考えられた。
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