研究概要 |
サイトカインは、次世代の治療薬として期待されつつも、その生体内安定性の乏しさとin vivo生理作用の多様性ゆえに、臨床応用が断念され続けてきた。我々が独自に開発を試みている水溶性高分子ハイブリッド化は、サイトカインの生体内安定性を飛躍的に向上できるうえ、さらに目的とする治療作用と副作用とを選択分離し得るため、上述の問題を同時に克服可能な新規創薬法として期待されている。本研究では、血小板造血製剤として注目されているIL-6を臨床に適用可能な医薬品として開発していくことを念頭に、生体内安定性に優れ、かつ多様なin vivo生理活性の中で目的とする治療作用(血小板産生促進作用)のみを有するハイブリッドIL-6を分子設計しようとするものである。以上の観点から本年度は、まずPEGを修飾高分子として用い、IL-6の最適ハイブリッド化条件を追求した。その結果、in vitroにおけるPEG-IL-6の比活性は、PEG修飾率の増大と共に減少し、この比活性低下の程度は、ハイブリッド化に用いたPEG分子量の増大に伴って著しいものとなった。これは、単に活性発現に関与するアミノ酸残基をPEG修飾してしまうことのみならず、IL-6に結合しているPEG鎖長の増大により生じる立体障害によっても、比活性が著しく損なわれてしまうことを意味している。一方、in vivoにおける血小板産生作用・副作用を評価したところ、分子量5,000のPEGで約50%のPEG修飾率に制御したPEG-IL-6(MPEG-IL-6)が最も有効性・安全性に優れていることが判明した。体内動態を検討した結果、MPEG-IL-6は血中滞留性、組織移行性、プロテアーゼ抵抗性などのバランスに優れていることが明らかとなった。以上、当初計画通りの成果が得られたものと考えられた。
|