研究概要 |
骨粗鬆治療薬としてのsalmon calcitonin(sCT)とhuman parathyroid hormone誘導体hPTH(1-34)の作用機構・動態・相互作用について調べた。(1)骨粗鬆症治療作用:ovariectomy(OVX)-およびsteroid-induced骨粗鬆症rat modelで治療効果の用量-反応関係を組織形態学的計測と骨強度測定で評価し、sCTの20U/kg,s.c./5days/weekとhPTH(1-34)の10μg/kg,s.c./5days/weekの8週間授与で同等の治療効果(約60-65%の骨量回復)を得た。(2)動態・相互作用:sCT、hPTH(1-34)、rat PTHとrat osteocalcinそれぞれについて超高感度ELISAを開発し、sCTの骨粗鬆症治療量投与時におけるrat血中PTHの動態を調べ、sCTの治療作用にrat内因性PTHの関与について検討し、sCT作用の一部が内因性PTHに由来する可能性を認めた。(3)作用機構・新展開I:骨代謝担当細胞の破骨細胞(OC)と造骨細胞(OB)を用いてin vitroの作用を調べた。hPTH(1-34)はrat OCのpit形成能を異常に亢進させる反面、sCT感受性を約1/16に低下させること、cytokinesに対する反応性の比較から、その性格付けを行った。また、rat骨髄由来OBによる骨形成系を確立し、hPTH(1-34)のin vivo骨形成促進作用をin vitroで再現することを試行したが、hPTH(1-34)はin vitroではOBのnodule形成を一義的に抑制することを認めた。このin vitro骨形成系で、培養に用いるFCS中に骨形成抑制因子と骨形成促進因子の存在を示唆する意外な発見があり、これら因子の同定実験が進行中である。(4)新展開II:臨床で骨代謝指標(骨粗鬆症患者で上昇)として汎用される尿中deoxypyridinoline(D-Pyr)の日内排泄パターンにおいて、正常♀ ratでは日内リズムが検出されないが、OVX後に明時で低く暗時に上昇するリズムが出現すること、また、治療量のsCT投与は予期に反して尿中排泄量を増加させ、血中含量は低下させることを見いだした。SCTの排泄増加作用の機構解明と骨吸収指標としての尿中D-Pyrの信頼度に関する一連の再評価試験に発展した。
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