研究分担者 |
関田 康慶 東北大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (20107113)
堀尾 裕幸 国立循環器病センター研究所, 疫学部, 室長 (20157069)
小坂井 嘉夫 宝塚市立病院, 心臓血管外科, 診療部長(研究職)
宮武 邦夫 国立循環器病センター, 生理検査機能部, 部長(研究職)
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研究概要 |
本年2月末に臓器移植法の施行後、初の脳死移植が実施されたが、移植医療の定着には、経済的問題の検討も重要である、そこで本研究では、臓器移植に関する経済的問題として、心臓移植(以下単に移植と称する)の費用分析と費用-便益分析に関して考察した。平成10年度は、移植の間接経費を前年度に検討した方法により試算し、前年度に求めた直接経費を加え、移植経費を算出した。また、移植に関する費用-便益分析の方法・モデルについて検討するとともに、それに基づく分析を試みた。以下にこれらの概要を示す。 (1) 移植経費のうちの間接経費(紙面の都合上、試算条件などは省き、結果のみを記す):移植の間接経費としては、ドナー心の輸送費を除く移植コーデイネータなどの人件費、臓器移植ネットワークシステム、その他の諸経費の年間運用経費を算出し、年間予測臓器移植件数で除したものの合計としたが、これらの試算結果は1,200,000円で、これに輸送費1件あたり1,300,000円を加え、間接経費は2,500,000円となった。これに前年度試算した直接経費を加えると(2年目以降の術後管理費を除く)、通常の場合、15,375,000円となった。 (2) 移植の費用-便益分析:心臓移植の費用-便益分析のため、次のような手順・方法を考案した。(1)移植の効果の指標として、移植による延命効果としての延命年数を用いる。(2)移植の効用や指標として、患者のQOLを考慮した質を調整した生存(延命)年数(QALY)を用いる。(3)移植対象者が将来に得べかりし利益をQALYに基づくホフマン式計算法により算出し、これを移植の便益とする。(4)適当なモデル移植対象患者について、移植の便益を試算する。(5)これと上記の移植経費の試算結果から、純便益を求める。 50歳の男性サラリーマンを移植対象モデル患者とし、幾つかの条件(ここでは記述せず)を仮定した上、純便益を算出した結果、就労係数0.8の場合、6,462,200円となった。
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