薬物胆汁排泄機能の個人差の分子レベルでの解析

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09470523
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 鈴木 洋史 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教授 (80206523)
• 研究分担者: 伊藤 清美 北里大学, 薬学部, 講師 (60232435) ; 加藤 将夫 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (30251440) ; 杉山 雄一 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (80090471)
• キーワード: 胆汁排泄 / 胆管側膜透過 / 有機アニオン輸送担体 / ABC輸送担体 / cMOAT / MRPファミリー

研究概要

肝細胞中で解毒酵素の働きによって生じたグルクロン酸抱合体およびグルタチオン抱合体を含む多くの有機アニオン系化合物は、肝細胞胆管側膜上に発見される排出輸送体canalicular multispecific organic anion transporter(cMOAT)により排出を受けるが、正常ラットおよびcMOAT欠損ラット(Eisaihyperbilirubinemic rat;EHBR)における有機アニオン系化合物の排泄動態について検討を加えたところ、cMOATのみでは説明できないことを示すことができた。排泄に関与する輸送担体の存在は、胆汁排泄機能の個人差をも説明しうるものと考えられ、その分子レベルでの解明を試みた。その結果、cMOATの類縁蛋白multidrug resistance associated protein(MRP)-like prot ein(MLP)-1,2という2種類の排出輸送担体のcDNAの全長をクローニングすることができた。このうち、MLPー2はEHBR肝臓において誘導により発現量が増加していた。そこで、正常ラットに対して種々の処理を行い、誘導機構に関する知見を得た。その結果、ビリルビンあるいはそのグルクロン酸抱合体の血清中(肝臓中)濃度を上昇させることにより、またフェノバルビタール処理することにより誘導されることを示すことができた。これらの結果から、異物解毒に関与する代謝酵素と同様に、異物排出に関与する排出輸送担体もhousekeeping型(cMOAT,MLP-1)およびinducible型(MLP-2およびP-糖蛋白)に分類可能なことが初めて系統的に示された。

研究成果

• [文献書誌] 鈴木洋史: "異物排除におけるトランスポーターの役割:cMOATおよびMRP superfamily memberを中心として" 蛋白質核酸酵素. 42. 1273-1284 (1997)
• [文献書誌] H.Ishizuka: "Temocapril,a novel angiotensin converting enzyme inhibitor,is excreted into bile via an ATP-dependent active transporter(cMOAT)that is deficient in Eisai hyperbilirubinemic mutant rats (EHAR)." J.Pharmacol.Exp.Ther.280. 1304-1311 (1997)
• [文献書誌] M.Masuda: "Methotrexate is excreted into the bile by canalicular multispecific organic anion transporter(cMOAT)in rats" Cancer Res.57. 3506-3510 (1997)
• [文献書誌] K.Niinuma: "Kinetic analysis of the primary active transport of conjugated metabolites across the bile canalicular membrane:Comparative study between DNP-SG(S-(2,4-dinitrophenyl)-glutathione)and E3040-glucuronide" J.Pharmacol.Exp.Ther.282. 866-872 (1997)
• [文献書誌] K.Ito: "Functional analysis of a canalicular multispecific organic anion transporter cloned from rat liver" J.Biol.Chem.273. 1684-1688 (1998)
• [文献書誌] 鈴木洋史: "胆汁排泄のトランスポーター" 生化学. 69-9. 1098-1101 (1997)
• [文献書誌] 鈴木洋史: "抗癌剤の相互作用" (医薬ジャーナル社)杉山雄一、佐々木康綱編,
• [文献書誌] 鈴木洋史: "肝臓病学の最前線1997" (中外医学社)山中正巳、滝川一編,