研究概要 |
三年間にわたるこの研究費により約20編の論文を国際誌に発表した.1.鎮咳薬のdextromethorphanが延髄孤束核神経細胞のグリシン電流を抑制することを見い出した。咳中枢の存在が強く示唆される延髄孤束核においてグリシンが咳発生の制御因子として関わっている可能性が予想された。2.粘液線毛システムに影響する炎症性物質の検索を行い、好中球由来のelastaseをはじめ、多くの活性物質を見い出し、多彩な病態像を明らかにした。3.気管上皮細胞の機能に関わる転写因子を同定できた.我々が同定した転写因子のひとつは,MEF(myeloid Elf-1 like factor)であることがわかった.MEFは他のets family遺伝子よりかなり強力にlysozyme promoterを活性化した.また,MEFは血球細胞だけでなく上皮細胞にも発現しlysozyme promoter のets結合ドメインに結合し,その結合は独自に作成した抗MEF抗体により影響を受けた.さらに,anti-sense MEFの導入によりendogenousなlysozyme発現が抑制された.新たに作成したMEF安定発現株において,lysozymeの遺伝子発現およびタンパクの発現が高レベルであった.MEFによる転写活性化は未知の転写因子による増強される可能性が示唆された.4.麦門冬湯が滋潤作用をもつことに注目し、肺サーファクタントの分泌細胞である細胞II型上皮細胞に対する作用について検討した結果、麦門冬湯は肺サーファクタントの分泌を促進すること、その機序にはcAMPおよびカルシウム依存性の複数の伝達系の相乗的クロストークが重要であることを示した。5.肺サーファクタントの産生細胞である肺胞II型上皮細胞は数日の培養により肺胞I型上皮細胞へと分化転換することがわかった。
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