研究概要 |
免疫測定法において、特にタンパク質への優れた普遍的標識法の確立を念頭に置き、制限標識導入の基本的な考え方を創出することが本研究の目的である。そこで、本年度は、ミクロペルオキシダーゼ(MP)およびヘミン標識について、抗原モデルのインスリンの精密標識体の調製法を検討した。(1)ミクロペルオキシダーゼ(MP)精密標識インスリンの調製:インスリンは一分子内に三ヶ所の遊離アミノ基を有する。まずそれぞれのアミノ基に対し部位選択的にMPを導入した精密標識体を調製した。まず、インスリンの特定のアミノ基を保護した3,4,5,6-tetrahydrophthalyl(THP)-インスリンをHPLCを用いて分離調製し、これにSH基導入試薬であるN-succinimidyl S-acetylthioacetate(SATA)を反応させ、架橋基導入位置の異なる3種のAcetylthioglycoloyl-インスリン(ATG-インスリン)即ち、Gly(A1)-,Phe(B1)-およびLys(B29)-ATG-インスリンを調製した(THPが極めて能率的な可逆保護試薬であることは既に見出している)。一方、MPに2-pyridyldithiopropionoyl(PDP)基を導入する。MPには2ヶ所のアミノ基があるため、この導入体も単一ではない。これを更にHPLCを使って分離調製し、精製したLys(3)-PDP-MPと各ATG-インスリンとを反応させ、インスリンおよびMPの各特定位置間を結合した3種のMP標識インスリンを調製できた。 (2)ヘミン標識インスリンの調製:ヘミンのカルボキシル基を利用して水溶性ジシクロヘキシルカルボジイミド(EDC)によりヘミンをインスリンと直接反応させる。インスリンは前述した様に特定のアミノ基保護体を調製し、これとヘミンをEDCにより縮合させた後、保護基を酸脱離して半ランダム標識体を調製することができた。 また、これらの調製物を使用し、化学発光法によるイムノアッセイが可能であることを予備的に確かめ得た。
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