研究概要 |
ヘム触媒標識免疫測定(EIA)に用いる標識分子の大きさ3種(Horseradish peroxidase(HRP)、ミクロペルオキシダーゼ(MP)及びヘミンについて、標識の影響を抗原モデルのインスリンと中型のタンパクであるトランスフェリン(Tf)の測定について検討し、今年度、下記を明らかにした。 (1) インスリンについて標識位置、標識分子の大きさが抗体との結合に与える影響をMP及びヘミンについて検討し、次の結果を得た。 (a) Gly(A1)-及び Lys(B29)-MP標識インスリンを調製し、競合法EIAにて感度比較を行ったところ、この2者に大きな差はなかった。Phe(B1)-MP標識インスリンについての調製は3,4,5,6-tetrahydrophthalic anhydrideをアミノ基の可逆保護試薬として使用する特別な方法を開発した。これを用いるEIAの感度比較値は未定である。 (b) インスリンの三つのアミノ基のそれぞれ一つだけに架橋基を導入する方法を完成させた。この新開発法を用いることにより、インスリンの特定アミノ基への標識体を今後自由に得ることができるようになった。 (2) Tfについて、HRPモノ標識TfとHRPマルチ標識Tfとを新規に調製した。この二種の標識体について抗ヒトTfポリクローナル抗体固定化96穴プレートを用い、化学発光EIAにより感度を比較した。HRP-モノ標識体を用いると、HRPマルチ標識体の8倍高感度が得られた。HRPマルチ標識はHRPによる立体的障害が大きく、抗体との結合が低下すると考えられる結果を得た。なお、モノ標識体を用いる、特別な前処理が不要な、高感度な尿中Tfの測定法を開発した。
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