研究概要 |
免疫測定法において、特にタンパク質への優れた普遍的標識法の基盤確立を目的に、標識制限導入の基本的な考え方を創出した。 1) インスリンへのワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識では、インスリン抗体及びインスリン自体の測定とも単一標識の方が2ケ所標識よりも高感度が達成出来た(先行研究)。中型タンパク質であるトランスフェリン(Tf)へHRP標識すると、やはり、単一HRP標識の方がHRPマルチ標識Tfよりも高感度となった。即ち、HRPマルチ標識はHRPによる立体的障害が大きく、抗体との結合が低下すると考えられる結果を得た。実際、この知見に基づいて、モノ標識体を用いて、特別な前処理が不要な尿中Tfの高感度測定法を開発し得た。 2) Gly(Al)-及びLys(B29)-ミクロペルオキシダーゼ(HUP)標識インスリンを調製し、競合法EIAにて感度比較を行ったところ、この2者に大きな差はなかった。つぎに、標識に小分子ヘミンとすると、インスリン1分子あたり約2.4個のヘミンが結合したランダム-ヘミン標識では、単一標識体であるLys(B29)-ヘミン-インスリンより高感度が達成され、化学発光イムノアッセイでは、20fmolのインスリンが測定可能であった。即ち、小分子による標識は立体障害が少なく、複数標識による直接の感度上昇が大きくなり得るので、ランダム標識が良いことがある。 3) 更に、本研究では、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物をアミノ基の可逆保護試薬として使用し、インスリンの三つのアミノ基のそれぞれ一つだけに架橋基を導入する方法を完成させ、この新開発法を用いることにより、インスリンの特定アミノ基への標識体を自由に得ることを可能にした。
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