野菜のおいしさには、外観・味・テクスチャーなどが影響しているが、野菜は鮮度が低下するに従い、味が落ちるといわれている。鮮度に関する成分変化について色素成分や水分含量は、黄化やしおれの指標として、またアスコルビン酸は栄養成分としてよく測定される。しかし、食品の味覚を決定づける因子である呈味成分、糖や有機酸については測定例も少なく、特に有機酸については貯蔵による変化を測定した例はほとんどない。 4℃で貯蔵したほうれん草は21日貯蔵後も黄化はあまりみられず、食用可能といえるくらいであった。貯蔵に伴いシュクロースが減少し、グルコース、フルクトースが増加しつつ、呼吸代謝で使われ減少していくという傾向が一貫してみられた。遊離アミノ酸については、貯蔵に伴い増加していく傾向がみられた。その原因としてタンパク質の分解と、TCA回路のケト酸からの遊離アミノ酸の合成が考えられた。0日のほうれん草のクエン酸とリンゴ酸含有量はほとんど変わらなかったが、貯蔵により一方が増加し、もう一方が減少する傾向にあった。 10℃、95%RHで貯蔵したきゅうりは10日後にカビのようなものがはえ、腐敗しかけてしまった。本来ならば10℃、高湿度という条件は2〜3週間貯蔵可能なはずであるから、湿度が高すぎてしまったのか、今後同様に貯蔵を行う際は、貯蔵条件について検討の必要がある。遊離アミノ酸は、ほうれん草とは異なり、全体的に貯蔵に伴い減少する傾向にあった。またリンゴ酸が貯蔵に伴い減少、クエン酸が増加した。 きゅうりを部位別に分け、呈味成分の有機酸を測定した。これはさきの結果においてばらつきが多かったため、サンプリングの問題点を指摘され、部位による差が大きいことが考えられたためである。きゅうりのビタミンCは先端部と、種子を含む部分に多く、クエン酸、コハク酸、乳酸は先端部に多かった。あわせて部位により、呈味に差があるかどうか官能検査を行った。
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