研究概要 |
活性酸素消去能は、ガンや生活習慣病などを予防する働きがあることが知られているが、これらの成分が調理過程でどのように変化し、実際の食事の中でどの程度有効なのかは明らかではない。しかし、食物のような複雑な系にも適用できる簡便な活性酸素消去能測定法は存在しない。本研究では、1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカルに対する捕捉活性を指標とする方法に着目した。DPPHは活性酸素消去能を持つ物質に捕捉され、非ラジカル体となると可視部の吸収が消失する。しかし、食物には色素などの着色物質が多く存在するため、分光光度計では分析が不可能である。そこで、HPLCを用いて分離・定量するDPPH-HPLC法を開発することにより、食物中の活性酸素消去能の測定を可能とした。次に、野菜中の活性酸素消去能測定の試みとして、栽培条件の異なるキャベツおよびハクサイの活性酸素消去能の測定を行ったところ、有機質肥料を用いた場合でも化成肥料を用いた場合でも活性酸素消去能に有意な差はみられなかった。さらに,調理過程における活性酸素消去能の挙動を明らかにするため、カレーの調理過程における活性酸素消去能の変化を測定した。その結果、カレーの調理過程においては、スパイスは加熱により活性が減少するのに対し、野菜類では加熱により増加した。また、野菜に由来する活性酸素消去能は、スパイス由来の活性に匹敵するものであった。以上の研究結果は、実際の食物に適用可能な活性酸素消去能の測定法を開発するとともに、調理過程における活性酸素消去能の変化を明らかにしたものであり、健康を維持するための食生活の設計に大きく寄与するものである。
|