本研究は、日本および世界の科学技術研究における、冷戦終結後の「核から非核への転換」(非核コンヴァージョン)の進展経過と、そこに認められる特徴および問題点について、総括的な認識を獲得し、それに基づいてこれからの「非核コンヴァージョン」およびその促進政策の在り方について提言を行うことを目的とする。本研究の期間は平成9年度から11年度までの3ヵ年である。平成9年度の主な研究成果は、次の3点である。 1.包括的核実験禁止条約(CTBT)署名開始後の米国の核兵器研究について、主として文献にもとづいて調査し、それが大筋において「技術保存政策」のひとつの類型、つまり研究所および研究者の温存政策、として理解できるものであることを発見した。 2.ヨーロッパにおける高速増殖炉開発計画からの撤退について、文献資料を集めるとともに、フランス、英国、ドイツの指導的研究者から直接事情を聞き、ヨーロッパ諸国の国際協力による「技術保存」への努力が進行中であることを発見した。 3.日本の高速増殖炉開発政策の将来について勧告を行う原子力委員会高速増殖炉懇談会の専門委員としての立場を生かして、文字・口頭の多くの情報を集め、「ソフトランディング政策」が現実に進行中であることを発見した。また「ハイテクの凍結保存学」の着想を得た。さらに高速増殖炉開発政策をはじめとする日本のプルトニウム政策における人々の思想と行動について、「パラダイムの危機」に関するトーマス・クーンのモデルをベースとした理論を構築し、その有効性を確認した。
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