本研究の目的は、次の3つである。(1)冷戦終結後の世界の核エネルギー研究におけるリストラクチャリングの動向を概観すること。(2)リストラクチャリングにともなう研究資源(研究者、研究施設、研究資金など)のコンヴァージョンを促進するための主要国の政策について概観すること。(3)日本におけるリストラクチャリングおよびコンヴァージョン政策の在り方について、批判的分析を行うこと。コンヴァージョン政策が重要である理由は、2つある。第1は、リストラクチャリングの副作用を抑えること。第2は、コンヴァージョンの受け皿を用意することによって利害関係者の抵抗を弱めること。なお本研究では主として、民事利用の分析に力点を置いた。それは第1に、軍事利用分野に関しては世界的に調査が進んでいるからである。また第2に、日本の場合は軍事利用事業自体が存在しないからである。 研究成果の相当部分はすでに出版されており、そのリストは報告書にある。代表的な3点のみを裏面に記す。主な研究の知見は次の3点である。(1)欧米諸国では周到なコンヴァージョン政策が不在であるにもかかわらず、リストラクチャリングは比較的順調に進んでいる。(2)それとは対照的に日本では、従来からの基本政策の見直しがいまだ実現しておらず、リストラクチャリングは限定的なものにとどまっている。その主要な原因は、日本の政策的意思決定機構の閉鎖性にある。そこでは当該政策の所轄官庁の利害が、過剰に保護されるのである。(3)リストラクチャリングを進めるためには、政策的意思決定機構の抜本的な改革が絶対的に不可欠である。それと同時に、適切で効果的なコンヴァージョン政策の立案が重要である。
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