運動は骨量増大作用をもち、骨粗鬆症の予防に有効であることが昔から知られているが、その基本的なメカニズムについては不明な点が多い。我々は、pQCT(Peripheral Quantitative Computed Tomography)法を用いて若年成人テニス選手の橈骨の左右比較から、成長期の骨に力学的負荷が加わると体積骨密度が減少する可能性を示唆する結果を得て、最近発表した(J.Appl.Physiol.1999印刷中)。これは、2次元平面に投影された骨のX線像の解析に基づく従来からのDEXA法などにおいては、トレーニングによる骨横断面積の増大効果が投影面積当たりの骨塩量である面積骨密度に加算されていたことによる測定法の限界によると考えられる。本年度は更に、中高年テニス愛好家を中心とした大規模調査を開始した。 3年以上の経験を有するテニス愛好家および一般健常人の同意を得て、女性192名、男性46名のpQCT測定と運動歴、履病歴などの質問調査および身長、体重、握力などの測定を行った。上腕骨のpQCT測定は、左右各8画像を撮影し、橈骨遠位部を海綿骨の測定に、中間部を皮質骨の測定に用いた。成長期を過ぎてからテニスを始めた40歳代女性(78名)においても橈骨中間部の骨外膜周囲長は利き腕で増大しており、成長期から競技を開始した大学生の計測が示唆された結果と似ていた。現在はpQCT装置の計測結果を校正するための人工骨モデルを作成中であり、この作業完了を持って、骨密度などの計測結果詳細の検討を引き続いて行なう。本研究結果の一部を、以前に行った大学テニス選手についての研究結果と併せて、第53回日本体力医学会およびアメリカ骨代謝学会・国際骨ミネラル学会合同学会において発表した。
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