運動が骨量を増大する機序について 1)pQCT法を用いた骨の3次元構造の解析 2)骨代謝マーカーの測定から骨代謝の動態を測定 3)ビタミンD受容体遺伝子型の解析から運動と遺伝因子の相互作用の解析について検討した。平成10年度までに行った I.運動習慣が成人の骨構造に及ぼす影響(テニス選手の橈骨構造の左右差の解析)、II.運動習慣が中高年者の骨構造に及ぼす影響(テニス愛好家の橈骨構造の左右差の解析)に加えて、平成11年度にはIII、骨代謝に及ぼすレジスタンス運動トレーニングの影響およびIV.に対する骨代謝応答の個人差についての分子遺伝学的検討を行い、以下のような可能性を示唆が得られた。 1)運動による骨強度の増加は骨密度の増加ではなく、骨の外側への成長(Cortical drift)が主要な原因である可能性が橈骨骨幹部の皮質骨の観察から示された。これは、運動により骨モデリングが皮質骨外側で活発になっているという機序を示唆している。 2)同様な骨構造の運動にたいする適応は中高年になってからでも期待できる可能性がある。 3)骨代謝はレジスタンス運動トレーニング開始後かなり早い時期、1ケ月以内から変動が観察可能である。 4)レジスタンス運動トレーニングに対する骨代謝応答の個人差には遺伝因子の関与があり、その一部はビタミンD受容体などの遺伝子多型から予想がつく可能性が考えられた。
|