最終年度である本年度は、昨年実施した運動能力検査(東教大式)を実施した結果から運動発達の最近の傾向を明らかにし、幼児の遊びの実態ならびに園の環境調査の結果と幼児の運動能力の発達の関連についても検討し、さらに代替種目や測定の設定条件についての検討を行った。その結果、まず、新しい全国標準値を作成し、さらに前回(1986年)の結果と比較したところ、全種目とも有意な低下を示し、最近の幼児の運動能力の低下の問題が指摘された。園環境による運動能力の比較では、幼稚園と保育所における運動能力に差はみられず、園庭や園舎の広さと運動能力の間にも関連はみられず、専門の講師の有無を含めて園での運動指導や運動施設への配慮が運動能力の発達にはほとんど貢献していないことも示された。生活環境による運動能力の比較では、住居形態が集合住宅より一戸建てに住んでいる子どもや兄弟数が多く、3世代以上の家族のほうが運動能力が高かった。集合住宅居住階層に関しては、高層住宅(10階以上)に住んでいるからといって運動能力が低いことは示されなかった。子どもの遊びによる運動能力発達の比較では、遊びの内容に関しては、外遊びが多く、遊びの種類が多い子どもや遊びのリーダーや運動遊びが上手な子どもほど運動能力が高く、その傾向が女児よりも男児のほうが高かった。また、代替用に関して、25M走の代替として往復走、ソフトボール投げの代替としてテニスボール投げについて検討したところ、ソフトボール投げとテニスボール投げの代替が認められた。さらに、測定の設定状況での動機づけや練習効果に関しては、立ち幅跳びと両足連続跳び越しの2種目に関しては応援の効果が認められ、25M走において競争相手が弱い場合には記録が低下することも認められたが、他の種目においては動機づけへの影響や練習効果は認められず、全体としては測定の設定状況における影響は認められなかった。
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