研究概要 |
研究期間(4年度間)の第2年にあたる本年度は,前年度に作成された民族スポーツの全国分布図中により,下記分担の20都県についてそれぞれ2事例を選定し,フィールドワークをおこなって当該民族スポーツの変容過程を記述することに課題が置かれた。 寒川恒夫(研究代表者) 南関東1都2県 瀬戸口照夫 南九州・沖縄4県 安冨俊雄 中国5県 石井浩一 四国4県 宇佐美隆憲 北関東4県 フィールドワークの結果,比較的多く見られた変容現象として観光化を挙げることができそうである。この場合の観光化とは伝統文化の観光化を意味するが,それは,それまで特定の地域集団にある意味で閉じられていた祭礼など伝統行事を,村おこしといった経済的動機のもとに部外者(観光客)に積極的に公開してゆく現象をいう。こうした現象は今回調査では沖縄県にことのほか顕著に認められた。そしてそこでは,町村の行政当局が主導する形で展開する特徴を示していた。伝統文化の観光化は日本に限らず,インドネシアのバリ島を代表に世界的に近年進行している現象であり,これに対しては,伝統文化の消失というより,むしろ新しい社会状況に対する伝統文化の側の主体的適応現象であるとみるべきとする考えが提出されている。民族スポーツの観光化現象は,来年度に調査を予定している27道府県についても,存在が予想される。
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