先行研究における生化学的研究により、筋収縮によるカルシウム濃度の増加が糖輸送担体(glucose transporter:GLUT4)を筋漿から筋膜へ移動させて、糖取り込み速度を増加させるという仮説が提示されている。しかし、実際に筋収縮による骨格筋のカルシウム濃度増加を測定した研究はない。そこで本研究では、骨格筋内のカルシウム濃度の光学的測定法及と筋の糖取り込み速度測定を組み合わせ、筋収縮による骨格筋の糖取り込み速度の増加のメカニズムの解明することを目的とした。 研究の初年度である今年は筋内カルシウムの測定系を確立することを目的とし、筋内カルシウムの測定にカルシウム指示薬であるfura2を用いて実験を行った。 その結果、対象としたラット骨格筋であるeptrochlearis筋では充分に時間をかけるとfura2が筋漿内へ取り込まれることが明らかになった。これは対象としたeptrochlearisの筋層が約20層と非常に薄く、これまで実験の対象となっていた筋と異なり、筋の内部が酸素不足に陥ることなく筋中のATPおよびCrP濃度が長時間インキュベートしても低下しないことによると考えられた。 さらにeptrochlearisを1秒1回の頻度で単収縮を繰り返させたところカルシウム濃度が上昇することが確認された。さらに、100Hzで10秒間、強縮させると、よりカルシウム濃度が上昇することが明らかになった。
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