身体トレーニング前後に同一強度の運動を行った場合、糖の消費量はトレーニング後に減少する。このことは、身体トレーニングが有限の糖を節約する適応と考えられている。この機序について、同じ運動を行っても、トレーニング後には活動筋へのGLUT4のトランスロケーションが低下し、活動筋における糖取り込み速度が低下していることによることが最近の研究により明らかになった。これは、同一強度の運動という筋収縮という観点から刺激強度が同一でも、それからGLUT4(グルコーストランスポーター)のトランスロケーションまでの刺激伝達系にトレーニングが影響を与えたと考えられる。 一方、安静時も、トレーニング後には、長い時間、活動した筋の糖取り込み速度が上昇し、さらにインスリンの効果が増幅されることが知られているが、その機序は明らかになっていない。 筋収縮により増加する筋中カルシウム濃度が、GLUT4のトランスロケーションまでの情報伝達系を活性化させるという仮説が提示されている。そこで本研究では、身体トレーニング前後で同一電気刺激に対するカルシウムの濃度変化を比較し、それが糖取り込み速度に与える影響を観察した。その結果、身体運動中における糖取り込み速度および急性身体運動後の糖取り込み速度に対して、筋収縮によるカルシウム濃度の増加の程度が異なる影響を与えていることが明らかになった。
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