研究概要 |
(1)丘陵地谷頭部および近年発生した表層崩壊の崩壊源において、浸透流から河流に転化する鍵となる位置での降雨-流出反応を連続観測により確かめ,斜面形状および土層構成を考慮したタンクモデルの構築を試みて,表層崩壊発生のひきがねとなる現象についての基本的知見を得ようとしている.この成果の一部はすでに公表し,さらに対象を追加して観測を継続中である. (2)富谷丘陵および高館丘陵で,それぞれ1986年および94年に大量発生した表層崩壊の分布を精査し,遷急線に着目した斜面地形分類に重ねて,GISを活用した分析を行った.その結果,富谷丘陵では下部谷壁斜面に(件数比で87:13,単位面積(km_2)あたり発生頻度で391:45),高館丘陵では上部谷壁斜面に(件数比で92:8,単位面積あたり発生頻度で91:20),それぞれ圧倒的に多数の崩壊が集中していることが明らかとなった.この成果は1997年11月に千葉大学で開かれたアジアの水文環境に関する国際シンポジウムで発表した. (3)上記の顕著な差異をもたらした要因を解明するため,両丘陵の崩壊・非崩壊斜面で,地形・地質特性,土層構造,土性,土壌水文特性の観察・分析・測定を行った.その結果,基岩の岩質に由来する風化特性および表層物質の緩速度移動特性の違いが崩壊発生位置の差異をもたらしている可能性が明らかになりつつある.これについてはさらに考察を加え,1998年度中の成果公表をめざす. (4)より長期の崩壊発生頻度についての知見を得るため,上記両丘陵の谷頭部および谷底に残されている崩壊起源の堆積物(を覆う腐植土層)の放射性炭素年代測定を行い,富谷丘陵においては上部谷壁斜面で約2,500年,下部谷壁斜面で300〜400年,高館丘陵の上部谷壁斜面・谷頭急斜面で約400年という崩壊発生間隔を得た.これについてはさらに考察を加え,1998年5月の日本地形学連合大会および9月の陸域古水文学国際会議で発表する.
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