研究分担者 |
小倉 康 国立教育研究所, 科学教育研究センター, 主任研究官 (50224192)
有元 秀文 国立教育研究所, 教科教育研究部, 室長 (40241228)
堀 哲夫 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (30145106)
五島 政一 国立教育研究所, 科学教育研究センター, 主任研究官 (40311138)
寺谷 敞介 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60087533)
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研究概要 |
思考力の育成には,目の前で起きる事実を自ら観察する実験を通して行うのが適していると考えられる。本調査研究では,生徒一人一人が主体的に取り組める機会として実験を用い,生徒の思考力育成法として,定型文を利用したり,実験班での討論を取り入れたりして,その変容等を総合的に調べていくこととし,ここでは育成する思考力を,他人にわかる表現で「結論と根拠」,「目的と考察」が論理的に対応した形で表現できることとした。 昨年度までに見いだされた結果を基に,さらに中学校理科および高等学校化学において実験を通した調査研究を行い,今年度は以下のような結果が見出された。 1 定型文に加えて,考察する際に目的を再確認させることで,「この実験で何がわかればよいか」,「レポートに何を書けばよいか」という質問が減り,考察が書きやすくなることが分かった。 2 考察の時間を設けることで,生徒間に自然に討論や意見交換が行われるようになった。また,他人に分かりやすく記述することを意識させることで,自分の言葉で書くようになり,自分なりの疑問を持つようになった。 3 中・高等学校で扱う実験には,物質の性質や現象を見出す実験と,自由研究など疑問を解決していく実験があり,後者で考察の根拠が重要な意味を持つことが確認された。考察する内容があり,さらに目的と考察が対応し,疑問検証や問題解決型の実験教材が思考力を育成するのに必要であることがわかった。 4 グループ討論では自分の意見が班内で最も問題解決に役立ったと評価された生徒でも,自分の考えを深めるのに役立ったと討論を評価していた。すなわち,グループ討論は他人に対する表現の工夫につながり,その工夫が思考を整理していると考えられる。さらに,自己評価することで自らの思考の変化に気づくようになった。
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