研究概要 |
本研究では,2分決定グラフ(BDD)に基づいた離散システム論に対する統一的アプローチを確立することと,プロトタイプシステムを統合システムへと発展させることを目指している.これによって,従来は可能であった離散システムの構造全体の暗黙的・効率的表現をコンピュータ上に行うことが可能になり,新たな展開が種々可能になる. 本年度の研究では,これまでの基礎研究で理論的にはかなり成熟した枠組みを与えることに成功しているグラフとネットワークの不変量.結び目の不変量,統計物理量の計算理論について,さらなる理論的精緻化を図った.特に,ネットワーク信頼性解析に関連した信頼度多項式の計算について,最近注目を浴びている確率化近似アプローチとは全く違った厳密解法で,中規模サイズの問題を解けるようにしたことは特筆される.システムの面でも,実際の通信網をモデル化したネットワークの平面構造から導出される性質に基づき,これまでとても厳密に解けなかったサイズ゙の問題が,本アプローチにより解けることを示した. また,これらに留まらずより広い範囲の離散システムにこの新パラダイムを適用することを行った.これは,3角形分割構造の解析,順序凸多面体と呼ばれる離散構造を通して,並列計算スケジューリングなどで現れるトポロジカル・ソ-トの列挙・数え上げにも通じる.また,この方向の成果を論文として発表することも行った.そこでは,マトロイド構造と2分決定グラフの関係が明らかにされている.
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