研究概要 |
本研究では,2分決定グラフ(BDD)に基づいた離散システム論に対する統一的アプローチを確立することと,プロトタイプシステムを統合システムへと発展させることを目指している. 本年度の研究では,まず理論的にBDDの表現能力に関する解析結果を発表した.単調な論理関数は,集合族としては独立システム,さらには単体的複体に対応するが,その表現として集合族全体をそのまま表した場合と,集合族の極大集合の集まりのみを表現した場合について,BDDの複雑度における差を明らかにした.特別な場合として,グラフ不変量計算で応用の広いマトロイドの場合は,この2表現に本質的差異がないことを示した.一方,一般の場合は,極大集合族ではコンパクトになるが,全体集合族では指数爆発している基本的な場合を示した. さらに,結び目の不変量であるJones多項式計算とネットワーク信頼度関数の計算について,具体的にプロトタイプシステムを作成し,これまで厳密には解けなかったサイズの問題群を実際に解いて見せた.このためには,理論と実際のギャップをうめる必要があり,平面グラフなど分離定理が成り立つクラスに関する理論的解析で大きな定数が出てきていた部分が,実際にはさほど大きな定数にならないことを実証し,実用的にうまくいくことを示した. さらに,幾何構造の離散的側面の表現に本手法が使えることを理論的に明らかにし,実際にその応用を示した.これらの広がりを通じて,本研究テーマのより広い分野への展開が図れており,本研究アプローチの有効性を示している.
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